(NEW !) C型肝炎経口薬療法の画期的進歩と残された課題について(’16年11月2日初稿)

千葉肝臓友の会 副会長 篠田省輔(肝炎コーディネーター)

周知の如く、近年、C型肝炎治療は画期的進歩を遂げました。C型肝炎の経口新薬は一昨年から続々と承認・発売され、その薬効は極めて高く、最新の新薬は、治験では有効率100%の結果が報告された薬もありますが、臨床に適用されてからも、薬剤により若干の差はありますが、ざっくり言えば、約95%以上の高い有効率で推移しているとわれています。又、副作用はインターフェロン治療に比べ格段に軽く、大きな副作用は感じられなかったという治療体験者が殆どです。特にインターフェロン治療と経口新薬治療の両方を体験した患者さんからは、治療効果、副作用ともに“地獄と天国”の差があり、“夢のような薬”との声を聞いています。

他方、併用注意・禁忌薬も多いので注意が必要であります。制酸剤、高脂血症薬、抗真菌薬、カルシュウム拮抗薬、抗不整脈薬、抗てんかん薬、睡眠薬などなど、かなり多く分野にわたる併用注意・禁忌薬があります。(当会会報前号掲載の併用注意・禁忌薬一覧表参照)。又、心臓疾患や腎臓疾患の持病を持っている患者さんなどでは、稀には、重篤な副作用が出ており、命にかかわるケースもあり得るとの警告が出されています。日本肝臓学会では、治療ガイドラインで、肝臓専門医の治療指針により治療を受けるよう強く勧めている所以です。

このようにC型肝炎経口薬治療は画期的な進歩を遂げ、病態に合わせて複数の経口薬治療法から選択適用が可能となり、急速に普及しつつあります。3年後には殆どのC型肝炎患者経口薬治療受けることになる動向です。近い将来、C型肝炎はマイナーな病気になるであろうと、言われる専門家もおられます。
さりながら、すべての問題が解決された訳ではありません。残された課題もあります。その主なものを挙げると、次の通りです。

その一つは、「リバビリンが使えないジェノタイプ2型の患者に対するリバビリン・フリーの治療」治療です。
C型肝炎2型の治療薬には、現状では、リバビリンが組み合わせられており、貧血の副作用は起こり得るので、貧血性向のある患者では適用できないか、要注意であります。今後リバビリンを使わないで済むC型肝炎2型患者への治療の承認が課題であります。

二つ目は、「経口薬治療不成功の患者に対する治療」 であります。
経口新薬の有効率は高いとは言っても、やはり一定の治療不成功例は出ています。特に一昨年承認の最初の経口新薬での不成功例は10数%のようです。これらの症例では、ウイルスが薬剤耐性を獲得していることが多く、有効な治療法が確立しているとは言えない状況です。経口新薬不成功例の患者さんにとっては深刻な問題で、「これからどうすればよいのか?」と、当会相談窓口に問い合わせがあります。これらの患者さんを救済できる新たな治療法は開発中と言われていますが、有効な治療法の一日も早い承認が求められています。

三つ目は、「非代償性肝硬変の患者に対する治療」であります。
重い肝硬変、即ち、
非代償性肝硬には、薬効も低下するし、重篤な副作用の出る可能性があり得るので、現在では、保険適用は認められていません。非代償性肝硬変まで病状が進んだ患者さんも少なくありませんので、今後、このような患者にも適用できる治療法を開発することも大きな課題であります。

以上、話題のC型肝炎経口薬治療の画期的進歩と残された課題について概説しましたが、関連する製薬企業は鋭意その解決に注力するとしています。早期の解決を期待したいと思います。今後も続々経口新薬は発表される動向です。肝炎患者としては、治療法の最新情報をいち早く知って対応することが肝要です。

ちなみに、現行のC型肝炎経口治療薬と近未来に承認されると予想される開発中の新薬を、〔C型肝炎経口内服薬/インターフェロンフリー療法一覧〕に纏めました。ご参考になれば幸いです。(次頁参照)。

〔C型肝炎経口内服薬/インターフェロンフリー療法一覧表〕

一般名・開発コード
〔 〕内は英語表示
レジメン
(薬剤適用組合せ)
HCV
遺伝子型
国内開発
ステージ
発売元
ダクラタスビル(DCV)
〔Daclatasvir〕
商品名:ダクルインザ
アスナプレビル(ASV)
〔Asunaprevir〕
商品名:スンベプラ
ダクラタスビル
+アスナプレビル
ジェノタイプ
1型(*注1)
発売(2014/9) ブリストル・
マイヤーズ
ソフォスブビル
〔Sofosbuvir〕
商品名:ソバルディ
ソフォスブビル
+リバビリン
ジェノタイプ
2型
承認(2015/3)
発売(2015/5)
ギリアド・
サイエンシズ
ソフォスブビル
〔Sofosbuvir〕
商品名:ソバルディ
レディパスビル
〔Ledipasvir〕
合剤商品名:ハーボニー
ソフォスブビル
+レディパスビル
ジェノタイプ
1b型
承認(2015/7)
発売(2015/8)
ギリアド・
サイエンシズ
バリタブレビル/リトナビル
オムビタスビル
合剤商品名:ヴィキラックス
バリタブレビル/リトナビル
+オムビタスビル
ジェノタイプ
1b型
承認(2015/9)
発売(2015/11)
アッヴィ合同会社
グラゾプレビル
(grazoprevir)
エルバスビル
(elbasvir)
グラゾプレビル
+エルバスビル
ジェノタイプ
1b型
第3相治験中 MSD
ダクラタスビル
アスナプレビル
べクラブビル
ダクラタスビル
+アスナプレビル
+べクラブビル
ジェノタイプ
1b型(*注2)
第3相治験中 ブリストル・
マイヤーズ
バリタブレビル/リトナビル
オムビタスビル
合剤商品名:ヴィキラックス
バリタブレビル/リトナビル
+オムビタスビル
+リバビリン
ジェノタイプ
2型(*注3)
承認(2016/9)
発売(2016/10)
アッヴィ合同会社
ソホスブビル
+レディパスビル
合剤商品名:ハーボニー
ソホスブビル
+レディパスビル
ジェノタイプ
2型(*注3)
第3相治験中
2型用として治験中
ギリアド・
サイエンシズ
ABT493+ABT530 ABT493+ABT530 1型、2型~6型(*注4) 第3相治験中 アッヴィ合同会社

(*注1):日本人には1b型が多いが、稀に1a型もある。この表ではジェノタイプ1と表示されているが1b型には薬効は高いが、1a型には薬効は低いという報告があるので要注意。海外の臨床治験で1a型には治療効果が低く、SVRは22%との報告がある。(2014年11月8日追記)
(*注2):ダクラタスビル+アスナプレビル+べクラブビルは 、べクラブビルを加えることによって効力を増すと共に、効き難かった1a型の著効率が上がるという報告がある。
(*注3):ジェノタイプ1型では発売済みですが、ジェノタイプ2型用として承認(2016年9月9日)。 2016年10月に適用可能になったが、2型用としては、リバビリン併用で、治療期間は16週間(1型向けは12週間)となっている。 (2016年9月17日、11月2日追記)
(*注4):ジェノタイプ1型~6型のすべての型に対して治験中。しかも標準治療期間は8週間(2ヶ月)に短縮される予想である。(2016年5月5日追記)。

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