肝炎・肝臓病治療の解説・まとめ

C型肝炎新薬は選択の時代へ「ダクルインザ」「ハーボニー」「ヴィキラックス」等 どれを選ぶか?【C型肝炎経口新薬比較一覧表】(’16年3月改訂)

(2016年3月5日改訂)

 千葉肝臓友の会副会長  篠田省輔(肝炎コーディネーター)

【 C型肝炎治療はインターフェロンから飲み薬へ、そして、飲み薬選択の時代へ】

周知の通り、C型肝炎治療法は、近年目覚ましい進歩を遂げました。革命的進歩といっても過言ではありません。従来、10数年間インターフェロンを中心とした治療がおこなわれ、この間、段階的に、薬や治療の改良が進み、当初5%程度だった治癒率から50%へ、さらに70%程度に改善されてきました。最近になって、更にウイルスに直接作用する第3の経口新薬(DAA)を併用したインターフェロン3剤治療法が開発され、治癒率は80%台まで向上してきました。

さりながら、これらのインターフェロンを含む治療は、副作用が多大(発熱、食欲不振、味覚異常、貧血、血小板減少、倦怠感、湿疹、間質性肺炎等)で、厳しいものでありました。 個人差はあるが、多くの患者はインターフェロン治療では、副作用で苦しめられ、忍耐を強いられました。よって、風評的に強調された面もありますが、インターフェロン治療はその副作用の強いことで有名であります。

このような状況の中で、2014年9月より、インターフェロンを使わない飲み薬のみで、治癒率が従来よりも高く、副作用が極めてすくない治療法が出現しました。飲み薬新薬第一弾、「ダクルインザ・スンベプラ」*1であります。いわゆるNS3阻害剤とNS5A阻害剤の組み合わせ治療です。インターフェロン3剤治療と同等か、これを超える治癒率であるが、耐性変異のあるウイルスがあり、変異がなければ90数%の治癒率であるが、変異がある場合は、治癒率が半減する弱点がありました。

そこで、2015年9月から飲み新薬第二弾の「ハーボニー」*2が出現しました。いわゆるNS5A 阻害剤とNS5B阻害剤の合剤であります。この薬は、治癒率が100%に近い成績であり、日本の第3相治験結果では治癒率100%でした。これは一般臨床で保険適用され、医療費助成も認可されました。未だ適用後の年月は浅いが、好調に普及しつつあります。今のところ、この薬は、ウイルスの耐性変異の影響は少ないようです。但し、心臓疾患や腎臓疾患の患者は適用に注意が必要です。

更に、2015年12月から、飲み薬新薬第三弾、「ヴィキラックス」*3が発売されました。いわゆる、NS3阻害剤とNS5A阻害剤の合剤であります。治癒率は、第二弾のハーボニーと殆ど遜色はなく、腎疾患患者にも適用しやすいのが利点です。

2014年から“C型肝炎は飲み薬治療に時代”に入ったといっていましたが、これで、2016年からは、“C型肝炎治療は飲み薬選択の時代”に入ったと言えます。どの薬が自分に最適か患者が選択して治療できる時代が来ました。ついては、患者自身もこれら新薬の利点・欠点を把握、理解しておくことが大事です。

(新薬の注釈)

*1: ダクルインザ・スンベプラ
一般名;ダクラタスビル/NS5A阻害剤、アスナプレビル/NS3阻害剤、2剤併用

*2:ハーボニー
一般名;レディパスビル/NS5A阻害剤、ソホスブブビル/NS5B阻害剤、2剤合剤

*3:ヴィキラックス
一般名;パリタプレビル/NS3阻害剤、オムビタスビル/NS5A阻害剤、リトナビル/作用増強剤、3剤合剤

【①「ダクル・スンベ」 ②「「ハーボニー」 ③「ヴィキラックス」から どう選択するか?】

勿論、これら新薬の適用は、肝臓専門医が患者の病態・状況を診て、治療法を提案・処方することになりますが、患者としても、新薬それぞれの特徴を充分知った上で選ぶことが肝要であります。 適用対象はC型肝炎及び代償性肝硬変患者です。薬効については、遺伝子変異を配慮して適切に選べば、大きな差はなく、高い著効率で治療ができます。当然のことながら、夫々の薬には、利点と欠点があります。ただ、ウイルスの遺伝子変異によって薬効が減弱するものもあれば、影響が少ないものもあります。他方、患者の病態や他の疾患を併発している患者の場合、注意を要するか、禁忌、即ち適用できないこともあります。更には、他の疾患で服用している薬と併用してはいけないか、又は注意を要する場合もあります。併用禁忌薬には、一部に一般市販の“サプリメント”もありますので注意が必要です。 主治医(肝臓専門医)の先生に、現在飲んでいる薬やサプリメントを報告し、判断を仰ぐことが大事です。

例えば、①と③の薬剤の場合、NS3阻害剤・NS5A阻害剤であるので、NS3/D168、NS5A/Y93,L31などの耐性変異がある場合、効力が減り、著効率が下がります。 その影響は、治験結果によれば、③の方が影響は少ないようです。
②は遺伝子変異の影響は少ないと言われていますが、上述のNS5A/Y93,L31が重複して存在する場合は、やはり薬効に影響があるという報告があります。他方②の場合、腎臓疾患が重い場合、即ち、eGFRが30%以下の場合や透析患者は禁忌と指定されています。①、②共に心臓疾患のリファンピジンなどの薬やセイヨウオトギリソウなどの市販サプリメントも併用禁忌又は注意薬です。又、③の場合は、Ca拮抗剤である血圧の降圧剤も注意薬です。
禁忌又は注意薬については、かなり多くあり、薬剤添付の説明書に詳しく書いてあります。それぞれの薬剤添付書を参照されることをお勧めします。

又、これらの飲み薬治療は、一般的には副作用は軽微と言われています。 しかし、事例は多くはありませんが、肝臓そのものに影響を与える場合(ALT上昇、血小板減少など)もあり、肝硬変患者の場合、状況によっては肝障害が出る例も報告されています。従って、肝臓専門医を主治医として経過観察しながら治療を進めることが推奨されています。

これらの新薬について、さらに詳細に述べたいのですが、冗長になりますので、これ以上は割愛します。代わりに、用法・用量、長効率、薬価、標準治療薬価総額、発売日などを一覧表にした表1=「C型肝炎1型経口新薬療法一覧表」(3月5日、用法・用量の一部改正)及び薬剤名、発売日、治験結果、耐性変異からみた治験効果、腎臓への影響、心臓への影響、肝臓、その他への影響を一覧表にした表2=「C型肝炎1型経口治療の治験効果と注意点一覧表」を掲載しますので、参考にして下さい。

表1=「C型肝炎1型経口新薬療法一覧表」

C型肝炎1型経口治療一覧表

 

 

表2=「C型肝炎1型経口治療の治験効果と注意点一覧表」

C型肝炎1型経口治療の治験効果と注意点一覧表