新薬・治療法のトピックス

C型肝炎新薬治療についての重要なお知らせ

皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。

ご承知のごとく、昨年12月、シメプレビル(SMV=プロテアーゼ阻害剤)の登場により、C型肝炎治療は大きく変わろうとしています。 シメプレビル、ペグ・インターフェロン、リバビリン3剤治療法が第一選択治療法として適用例が急速に増えています。 この治療法は、初めて治療を受ける初回治療例と、これまでペグインターフェロンやリバビリンで治療を受け一旦ウイルスが消失したものの再び増加した前治療再燃例では、SVR率がいずれも約9割、前治療無効例でも約5割といわれています。

又、今年の夏から秋ごろにはインターフェロンを使わない新薬、アスナプレビル(ASV)、ダクラタスビル(DCV)が登場し、更には、近い将来、ソフォスビル(SOF)、レディパスビル(LDV)などが登場すると云われています。

このような新薬による治療法の進歩は喜ばしいことですが、その一方で今後の新しい治療では留意すべき重要なことがあります。最近の医療講演会や医療雑誌で新薬の薬剤耐性、交差耐性、発がんに対する予防効果などについて、肝臓病治療をリードしておられる、泉並木先生や林紀夫先生が今後の治療のあり方について注意を喚起されています。

日経メディカル誌(2014423日)に上記の両先生への佐藤寿記者のインタビュー記事が載っています。この記事をご紹介しますと共に、C型肝炎患者の皆様には、新薬の薬剤耐性などを充分理解して治療法の選択をして頂きたいと存じます。 ウイルスの遺伝子検査、個人の遺伝子検査などで薬剤の耐性の有無、薬の効き方の程度を事前判定できるようになりつつあり、患者個人ごとにテーラーメイド治療をすることが求められる時代になって来ました。
治療については主治医にお任せではなく、患者としても最新知識を身につけ、自分自身に最も適した治療を選んで治療することが肝要です。

上記の記事のポイント部分を抜粋記載します。→関心のある方は同誌をご覧下さい。

 

「経口新薬の登場で専門医の指導的役割がより重要になる」
武蔵野赤十字病院副院長・消化器科部長泉並木氏インタービュー
佐藤寿=日経メディカル別冊 2014/4/23記事より 抜粋

〇これからは薬剤耐性への対応が不可欠に

DAAsは作用する部位により、プロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、ポリメラーゼ阻害薬の大きく3つのグループに分類できます。このうち2グループの薬剤を組み合わせインターフェロンを併用せずに治療するのがインターフェロンフリー療法で、副作用の軽減が期待されるため関心を集めています。 

留意すべきなのは交差耐性を示すと考えられていることで、例えば、あるプロテアーゼ阻害薬に対する耐性ウイルスが出現すると、別のプロテーゼ阻害薬にも耐性を示すようになります。日本では現在、複数のDAAsが開発されていますが、薬剤耐性の観点から見ると上記の3グループの薬剤しかないのが実状です。2つのグループに対し耐性が出現してしまうと、残るグループは1つになりますが、1つのDAAsで治療すると耐性を生じやすいので、臨床的には厳しい状況に追い込まれます。 つまり、インターフェロンフリー療法の場合、患者さんごとにあらかじめ薬剤耐性を調べた上で慎重に投与しなければなりません。抗菌薬における多剤耐性と同じような構図で、投与する前に有効か否かをきちんと把握し、適切な処方を行うことが肝要です。 

薬剤耐性ウイルスに対しては、インターフェロンが効果的です。DAAsが効かない耐性ウイルスであっても、インターフェロンはいわば“根こそぎ”効果を示すので、耐性ウイルスの存在はそれほど問題にならないのです。もし薬剤耐性などを治療開始前に調べられないのであれば、インターフェロンを含む治療法を選択すべきです。 

 

「治療法は先の選択肢を考慮に入れて決定すべき」
関西労災病院病院長林紀夫氏インタビュー記事
佐藤寿=日経メディカル別冊 2014/4/23記事より抜粋

〇インターフェロンを含む治療では発癌抑制効果が期待できる

シメプレビルを含む3剤併用療法は201312月に保険診療で行えるようになり、今年1月に入ってから実施件数が急激に増えています。その理由としては、SVR率が高いだけでなく、副作用がほとんど見られず、従来薬のように使用施設に対する制限がないことなどが挙げられます。その承認を待っていた患者さんが治療を始めたのです。 

今年の夏には、インターフェロンを含まない治療法である、インターフェロンフリー療法が日本で初めて承認される見込みです。この治療法に大きな期待を抱いている患者さんは少なくないのですが、留意すべき点が大きく2つあります。 

1つは、SVRを達成しても、インターフェロンを含む治療法と含まない治療法で同じようにその後の発癌抑制効果が得られるかどうかが明らかになっていない点です。日本人では欧米人よりも年齢が高く、発癌一歩手前という段階の患者さんが多いという特徴があります。また、インターフェロンを含む治療法であれば、既に抑制効果が確認されています。そのため、高齢あるいは肝線維化の進展例では、インターフェロンが使用できるのであれば、それを用いた治療を受けた方がよいと考えます。 

もう1つは、治療が無効だった場合、効果が期待できる次の治療法があるかという点です。直接作用型抗ウイルス薬(direct antivirus agentsDAAs)は薬剤が作用する部位により、プロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、ポリメラーゼ阻害薬の3グループに分類されます。仮に治療に失敗すると、C型肝炎ウイルス(HCV)が薬剤耐性変異を獲得し、同じグループの他の薬剤にも耐性を示すようになると考えられるので、同じグループの薬剤では治療に失敗しやすくなるのです。インターフェロンフリー療法ではDAAsのうち2つのグループの薬剤を組み合わせて用いますが、無効だと2グループに対する耐性変異が出現し、残るのは1グループの薬剤になってしまいます。インターフェロンを併用せず、単独グループの薬剤での治療だと耐性化するリスクが高いので、行うべきではありません。

日本で今夏にも承認されると予想されているインターフェロンフリー療法は、プロテアーゼ阻害薬のasunaprevirNS5A阻害薬のdaclastavirの組み合わせ(24週投与)です。仮にHCVが耐性を獲得すると、先ほど説明したように、ポリメラーゼ阻害薬しか効かなくなります。しかし、ポリメラーゼ阻害薬とペグインターフェロンを組み合わせた治療法は日本では開発されていません。 

その次のインターフェロンフリー療法は、ポリメラーゼ阻害薬のsofosbuvirNS5A阻害薬のledipasvirの組み合わせ(12週投与)で、承認は来年だとみられています。治療が無効だった場合、残るDAAsはプロテアーゼ阻害薬になりますが、これだとシメプレビル、ペグインターフェロン、リバビリンという3剤併用療法が次の治療法として期待できます。