目次
はじめに
千葉肝臓友の会副会長 篠田省輔(肝炎コーディネーター)
〇今、C型肝炎新薬の進歩が目覚ましい。今後も新薬が続々発表される予想です。インターフェロンとの組合せ治療法もあれば、飲み薬のみのインターフェロンフリー治療法もあります。話題になっている開発中の新薬・新治療法について、新薬名、レジメン(薬剤適用法・組合せ)、対象ウイルス遺伝子型、治験ステージ、発売時期、発売元などをまとめた一覧表をお知らせします。原典は英文表示が多いので、当方でジェノタイプ₁型、2型に分けてまとめ、日本語カナ表示に編集しました。
☆2017年6月3日の更新版では、「ハーボニー」のジェノタイプ2型への適用拡大について追記しました。
内容は、下記のとおりです。又、新薬一覧表内のアッヴィ社の新薬グレカプレビル/ピブレンタスビル(ABT493/ABT530)を申請中に更新しました。
ギリアド・サイエンシズ株式会社は、4月28日、C 型慢性肝炎治療薬「ハーボニー®配合錠」について、 「セログループ 2(ジェノタイプ 2)の C 型慢性肝炎又は C 型代償性肝硬変向けの抗ウイルス剤への適応拡大の承認申請を行 ったと、発表しました。今回の適応拡大が承認されますと、日本におけるほぼすべての C 型慢性肝炎を占め るジェノタイプ 1 及び 2 型の治療がリバビリンを使用しないハーボニーで可能にな ります。従来、セログループ 2(ジェノタイプ 2)の抗ウイルス療法は、リバビリンを併用するため、貧血などの副作用があり、リバビリンを使用しない治療法が待望されています。この適用拡大が認可されれば、貧血などで、適用を躊躇しているジェノタイプ2型の患者さんにとっては朗報です。(下線部は2017年6月3日追記、関連して、一覧表内の記述を更新)。
☆2017年1月29日の改訂版には、新薬一覧表の商品名の追加記載と「ジメンシー錠」の発売を追記しました。
☆2016年11月22日の改訂版には、セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」を目的にした1の新薬、グラジナ錠50mg(グラゾプレビル水和物)とエレルサ錠50mg(エルバスビル)を薬価収載(2016年11月9日)と同じく「ジメンシー配合錠」(ダクラタスビル塩酸塩/アスナプレビル/ベクラブビル塩酸塩、ブリストル・マイヤーズスクイブ)の承認(2016年11月11日)を追記し、に薬剤一覧表に反映しました。
☆2016年9月17日の改訂は、C型肝炎薬「ヴィキラックス」・「レベトール」のジェノタイプ2型への承認を追記し、薬剤一覧表に反映しました。
☆2016年9月5日の改訂は、「C型肝炎治療ガイドライン第4版」から→「2016年C型肝炎治療のガイドライン(第5版・簡易版)」 への改訂です。
最近、承認されたC型肝炎新薬の治療法を反映した内容になっています。(上記の第5版・簡易版表示錠をクリックすればご覧になれます。
☆(2015年9 月改訂版の改訂は話題の新薬ハーボニーの薬価決定と発売・保険適用認可について改訂しました又、一覧表に、治験中の近未来の新薬、グラゾプレビル+エルバスビル及びダクラタスビル + アスナプレビル +べクラブビルを追加しました。。→下線の部分。) 2015年12月版と2016年2月版とでは、「ヴィキラックス」について、更新・追記しました。
☆2016年5月改訂版は、「ヴィキラックス」(バリタブレビル/リトナビル+オムビタスビル)と「ハーボニー」(ホスブビル+レディパスビル)の2型適用治験又は申請中を一覧表に追加しました。加えて、アッヴィ社の新薬「ABT493+ABT530」(グレカプレビル/ピブレンタスビル)を追加しました。(2016年5月5日、2017年2月10追記)。
☆ブリストル・マイヤーズ社のダクラタスビルとアスナプレビルが2014年年9月2日に保険適用治療として認可され、医療費助成制度も利用できます。(C型肝炎初めての経口2剤治療薬です。)この経口2剤肝炎薬、ダクラタスビルとアスナプレビル治療に当たっては、肝炎治療の専門医の診察・判断に基づいて治療されることをお薦めします。事前の遺伝子検査によってこの薬がよく効くか、効きにくいかは判断できますので、この薬に対する薬剤耐性遺伝子検査を受け、その結果に基づいて肝臓専門医の指針により施療することが求められています。昨年より遺伝子検査で耐性変異なしの判定で、治療され、著効に至ったという多くの例があります。
✩バニプレビル(バニヘップ)が2014年11月25日にMSD社から発売されました。プロテアーゼ阻害剤でシメプレビルと同系統の薬です。シメプレビルと同様なインターフェロンとの併用薬で、治療ガイドラインでは、両方共第一選択薬として併記されています。(インターフェロン・リバビリン無効患者の著効率が比較的高いのが特徴です。)
✩ギリアド社からジェノタイプ2型への経口新薬(ソフォスブビル+リバビリン)が3月に認可され、2015年5月から発売されています。 又、ジェノタイプ1型への経口新薬「ハーボニー」(ソフォスブビル・レディパスビ合剤)が2015年7月3日に認可され、薬価が2015年8月26日に決定、8月31日より発売され、保険適用が認可されました。
いずれも、著効率は95%~99%と云われており、期待の新薬ですこれで、国内C型肝炎の殆ど全例(1型、2型)に有効率の高い経口薬のみの治療法が揃ったことになります。(2015年9月版改訂部→下線部)。
☆上記の「ハーボニー」は、ジェノタイプ2型にも適用すべく、治験中です。近い将来、2型にも適用が期待できます。(この下線部は2016年5月5日追記)。(この下線部は2016年5月5日追記)。
☆既に承認(20115年9月)済みの「ヴィキラックス」が愈々11月26日に価格収載され発売された。
ジェノタイプ1型用の第3の経口薬です。愈々経口薬の選択の時代になって来ました。(2015年12月11日追記)
☆アッヴィ社はヴィキラックスは2015年12月21日に、ジェノタイプ2型用にも適用可能として、2016年9月12日に承認されました。ヴィキラックスはジェノタイプ1型のC型慢性肝炎治療薬として、既に発売中の新薬ですが、2型患者にも認可されれば、2型患者への選択肢が広がります。1型、2型両方に使える最初のインターフェロンフリー薬となります。 2型に対しては、レベトール(リバビリン)を併用することになっております。(2016年9月17日追記/一覧表更新、2015年12月21日追記)/一覧表更新)。
☆2016年4月には、次の有望なC型経口新薬が発表されました。
それは、アッヴィ社のNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤ABT-493とNS5A阻害剤ABT-530の2剤併用療法です。海外臨床第2相試験の結果を発表しました。海外臨床第2相試験の結果によると、この新薬の1日1回・8週間投与により、肝硬変がないジェノタイプ1~3型の患者(計117例)の97~98%で、投与12週後の継続的なウイルス学的著効(SVR12)を達成。また1日1回・12週間投与により、肝硬変のないジェノタイプ2~6型の患者(計34例)の100%でSVR1を達成しています。ABT-493とABT-530の2剤併用療法は国内でも第3相試験中であり、近い将来、殆ど全部のジェノタイプへの適用と2ヶ月の短期治療が期待されます。(この下線部は2016年5月5日追記)。
✩今まで、インターフェロン治療ができなかった方、途中中止した方、効かなかった(無効の)方、代償性肝硬変の方、高齢で治療をあきらめていた方、いずれも、治せる可能性が出てきました。改めて新薬による治療を検討してください。インターフェロン治療に比べ副作用は格段に軽いと言えます。
✩詳細を知りたい方は、 「C型肝炎は飲み薬で治す時代へ」~今、患者はどうすればよいか~ をクリックしてご参照頂くと共に、肝臓専門医を受診し、最適の治療を選択し、施療されることをお勧めします。
✩尚、これらの新薬治療では、併用禁忌薬やサプリメントなどが指定されており、肝臓専門医の主治医に投与・服用している薬などをすべて報告することが重要です。 その一例して、「セイヨウオトギリソウ」(別名・セントジョーンズワート)があり、発売元(ギリアド社)から注意するようアナウンスがありました。
国内で開発が進む主な新規C型肝炎治療薬(経口直接作用型抗ウイルス薬)
原典:Winter 2014 NIKKEI MEDICALより(投稿者図表表示編集・改訂)⇒2015年9月1日、12月11日改訂、2016年2月22日改訂
〔インターフェロン併用療法〕
一般名・開発コード 〔 〕内は英語表示 | レジメン(薬剤適用組合せ) | HCV 遺伝子型 | 国内開発 ステージ | 発売元 |
---|---|---|---|---|
シメプレビル 商品名:ソブリアード | シメプレビル +PEG-l FNα-2a+リパビリン シメプレビル +PEG-l FNα-2b+リパビリン | ジェノタイプ 1型 | 発売 (2013/11) | ヤンセンファーマ |
バニプレビル 商品名:バニヘップ | バニプレビル +PEG-1FNα-2b+リパビリン | ジェノタイプ 1型 | 承認(2014/9) 発売(2014/11) | MSD |
ダクラタスビル(DSV) 〔Daclatasvir〕 | ダクラタスビル+PEG-lFN-λ+リバビリン | ジェノタイプ 1型 | 第3相治験 | ブリストル・マイヤーズ |
〔経口内服薬/インターフェロンフリー療法〕(2016年5月改訂版/最後部3項目追加)
一般名・開発コード 〔 〕内は英語表示 | レジメン(薬剤適用組合せ) | HCV 遺伝子型 | 国内開発 ステージ | 発売元 |
---|---|---|---|---|
ダクラタスビル(DCV) 〔Daclatasvir〕 商品名:ダクルインザ アスナプレビル(ASV) 〔Asunaprevir〕 商品名:スンベプラ | ダクラタスビル+アスナプレビル | ジェノタイプ 1型(*注1) | 発売(2014/9) | ブリストル・マイヤーズ |
ソフォスブビル〔Sofosbuvir〕 商品名:ソバルディ | ソフォスブビル +リバビリン | ジェノタイプ 2型 | 承認(2015/3) 発売(2015/5) | ギリアド・サイエンシズ |
ソフォスブビル〔Sofosbuvir〕 商品名:ソバルディ レディパスビル〔Ledipasvir〕 合剤商品名:ハーボニー | ソフォスブビル +レディパスビル | ジェノタイプ 1b型 | 承認(2015/7) 発売(2015/8) | ギリアド・サイエンシズ |
バリタブレビル/リトナビル オムビタスビル 合剤商品名:ヴィキラックス | バリタブレビル/リトナビル +オムビタスビル | ジェノタイプ 1b型 | 承認(2015/9) 発売(2015/11) | アッヴィ合同会社 |
グラゾプレビル(grazoprevir) エルバスビル(elbasvir) 商品名:グラジナ 商品名:エレルサ | グラゾプレビル+エルバスビル | ジェノタイプ 1b型 | 承認(2016/10) 発売(2016/11)
| MSD |
ダクラタスビル アスナプレビル べクラブビル 合剤商品名:ジメンシー | ダクラタスビル+アスナプレビル +べクラブビル | ジェノタイプ 1b型(*注2) | 承認(2016/11) 発売(2017/02) | ブリストル・マイヤーズ |
バリタブレビル/リトナビル オムビタスビル 合剤商品名:ヴィキラックス | バリタブレビル/リトナビル +オムビタスビル +リバビリン | ジェノタイプ 2型(*注3) | 承認(2016/9/9) 発売(2016/10) | アッヴィ合同会社 |
ソホスブビル+レディパスビル 合剤商品名:ハーボニー | ソホスブビル+レディパスビル | ジェノタイプ 2型(*注3) | 2型用として申請(2017/5) | ギリアド・サイエンシズ |
ABT493+ABT530 グレカプレビル/ピブレンタスビル | ABT493+ABT530 グレカプレビル/ピブレンタスビル | 1型、2型~6型(*注4) | 申請中 | アッヴィ合同会社 |
(*注1):日本人には1b型が多いが、稀に1a型もある。この表ではジェノタイプ1と表示されているが1b型には薬効は高いが、1a型には薬効は低いという報告があるので要注意。海外の臨床治験で1a型には治療効果が低く、SVRは22%との報告がある。(2014年11月8日追記)
(*注2):ダクラタスビル+アスナプレビル+べクラブビルは 、べクラブビルを加えることによって効力を増すと共に、効き難かった11a型の著効率が上がるという報告がある。
(*注3):ジェノタイプ1型では発売済みですが、ジェノタイプ2型用として承認(2016年9月9日)。 (2016年9月17日追記)
(*注4):ジェノタイプ1型~6型のすべての型に対して治験中。しかも標準治療期間は8週間(2ヶ月)に短縮される予想である。(2016年5月5日追記)。
2014年2月3日、 改訂:2014年7月28日、 改訂:2014年9月3日、 改訂:2014年10月18日
更新:2014年11月8日、改訂:2015年1月3日、改訂4月30日 改訂5月16日 9月10日 10月1日 12月11日 2016年2月22日